就活うつを事前に防ぐ|なりやすいタイプチェック&予防策
高校生や大学生にとって、受験以上に辛いものが就職活動です。
卒業研究よりも就職活動を優先させなくてはならず、「自分は一体何をしているんだろう」という思いや、思うように内定を取れないことから、就活をきっかけに心身の健康を損なう「就活うつ」にかかってしまう学生もいます。
就活うつとはどのようなものか、どんなタイプの学生がなりやすいか、就活うつで苦しまないためのヒントについて解説します。

1.就活うつになりやすいタイプ
1-1.真面目
真面目にコツコツ勉強してきたタイプの学生は、やったぶんだけ力がつくこと、努力は報われることを知っています。
サボることは悪である、いつか必ず報いを受ける……と信じている人にとって、自分よりも有能とはとても思えない人間が自分を差し置いて大人の社会に評価され、就職先を決めていくのは耐え難い屈辱です。
ライバルよりも良い企業に入りたいという思いや、自分の価値を認めてもらえなかった悔しさは自分を追い詰め、就職活動に向き合うことを辛いものにしていきます。
1-2.専攻分野が商業的ではない
特に文系の学生に多いタイプです。
社会学や言語学など、商業的ではない分野を専攻してきた場合、まずエントリーシートの「志望動機」が苦しくなります。面接で必ず聞かれるであろう「この会社を選んだ理由」と専攻が結びつかない場合、何かしたストーリーを創りあげなければなりません。
大学で学んできたことが社会で役に立たないと感じるのは強いストレスになります。
1-3.挫折の経験がない
小さな子どもは「万能感」にあふれていると言われています。大人のつくる社会、そして法律に守られて、狭い世界で生きるのを許されていること、若さという無限の可能性を所有していることからくる余裕の現れです。
ある程度の年齢になると、ネットを通じて外の世界と繋がることはできますが、あくまで大人の社会に一時入ることを許されたお客様の扱いです。学生が中心となって盛り上がるスポーツや社会運動であっても、豊かで力のある大人が裏で活動を支えていることが前提です。
このように既存のルールのなかで成長していった学生のなかには、挫折する経験をしそこねた人もいることでしょう。就職活動が最初の挫折となるのはよくあることです。
そして、就職活動以外で経験する挫折のように、心が回復するまでの十分な時間を与えられているわけでもありません。就職活動は時間との戦いでもあるためです。
1ー4.父親が大企業の中堅サラリーマンで、母親が専業主婦
「長年コツコツ勤めあげた転職経験のない父親」には、就職活動についての相談はしないほうが無難です。
日本が豊かであった時代、素直に愚直に、先輩の指示に従っていれば生活を守ってもらえた頃の感覚では、いまの就職活動の辛さは理解できません。
父親、母親ともに「仕事を選ばずに真面目に働けば大丈夫」「なんでもやります、と伝えればいい」「どんな企業でも3年は我慢するべき」「女の子の就職は結婚までの腰掛け」という考えで、家庭全体にその素朴な価値観が漂っている場合、そこは就職活動に苦労する子どもにとって気持ちの安らぐ場所ではなくなってしまいます。
2.就活うつの症状と原因
2-1.症状
不眠
うつ症状は、不眠から始まることが多いです。不眠症状には、寝付けない「入眠困難」と、眠ってもすぐに目覚めてしまう「早朝覚醒」、夜中に何度も起きてしまい、ぐっすり眠ることができない「中途覚醒」があります。
中途覚醒、早期覚醒は、入眠困難よりも症状が重くなりやすい傾向があります。寝足りないのに起きてしまった、寝付けないのにネガティブな考えばかりが頭をぐるぐるめぐって、布団から出る気力が出ない……という状態の時、自分が就活うつにかかりはじめていないか疑ってみましょう。
食欲が出ない、無意味に食べ過ぎてしまう
力が出ないのに空腹を感じず、食事の味が判らない…という症状も、うつ病の初期によく起こります。食べたものを胃が受け付けず、吐き戻してしまうこともあります。
味が判らないのは、舌にある味を感じる組織「味蕾」の反応が鈍っているためです。五感のなかでは、味覚がもっとも繊細な感覚です。その機能が鈍っているときは、自律神経が乱れています。
逆に、空腹でもないのに食べることをやめられない症状もあります。味も判らないのに苦しくなるまで食べ続けてしまいます。
頭痛
エントリーシートを書く時、面接会場に向かうとき、もしくは就活のことを考えたときに、強い頭痛に襲われます。
軽度のものは、不快さを伴う「ズキズキ」としたもので、悪化すると「ガーンガーン」という強烈な痛みになります。「金槌で連続して頭を叩かれるような痛み」とよく言われ、物事を考えることはおろか、まともに立っていることさえ難しくなります。
無気力
就活について考えるだけで体中から力が抜け、何もできなくなります。
椅子から立ち上がることも困難になります。顔の筋肉も弛緩して表情が消え、目元や頬が重力に負けて垂れ下がり、突然年老いたような顔付きになります。家族や恋人など、近しい人にこのような症状を感じ始めたとき、その人はかなり限界に近づいていると考えたほうがいいでしょう。
突然涙がでる
なんでもない事に突然涙が出て、自分でも制御ができなくなります。
なんでもない事とは、帰宅して家族に「遅かったね」と言われたときもあれば、レジで「ポイントカードはお持ちですか」と言われたときもあります。悪化すると一人では対処できなくなります。
強迫観念
突然いてもたってもいられない不安に襲われ、平静でいられなくなります。いわゆるパニック症状です。
この症状が悪化すると、自分の行動を制御できなくなり、自殺などの衝動的な行動をとってしまいやすくなります。
2-2.原因
就職活動は、自分の売り込みです。自分のこれまでの人生をエントリーシートという商品説明書に書き、企業に「私を買ってください」と交渉しに行く場です。
そこで「あなたのことは買いません」と断られるのは、人格を否定されていると感じるものです。
また、就職活動そのものも、学生が希望して行っているものではありません。好きでやっているわけでもない就活で自分を品評会に出し、さして有能であるとも感じられない年長者に「いらない」と否定されるというのは、人間としてひどく屈辱的なものに感じるでしょう。
それでも周囲がどんどん内定をとっていくと、「はやく結果を出さないといけない」と追い立てられるような気持ちになります。このストレスに耐えるのは大変なものです。
仕事に不満のある現役社会人が転職しない理由の一つに、「転職活動が大変」というものがあるほどに、就活は心を削られるものです。社会に出てストレス耐性のついた大人であっても、「あんな思いは二度としたくない」と感じてるということです。
2-3.就活うつになる学生の現状
現在、就職活動をする学生の7人に1人がうつ症状を抱えている、と言われています。
うつ症状は病気であり、本来の自分の姿を出すことが困難になります。就活うつを発症した学生は、そのままの姿で内定を得ることはさらに困難になり、よりつらい状況に陥る傾向があります。
3.就活うつにならないための予防策
3-1.「お祈り」は人格の否定ではない
まず、採用の見送り、いわゆる「お祈り」は人格の否定ではないことを認識しましょう。
採用の見送りは「好みではない人に告白された」「合いそうもない人とのお見合いを断った」に近いです。企業は擬似的な家族でもあり、その家族の一員に新たな構成員を加えるかどうか判断するとき、「いまの家族とうまくやれそうか」という、学生の能力とは無関係な要素が関わってきます。
その結果としての採用見送りは、「あなたはウチには合わないと思います」という人事部の判断でしかありません。
3-2.人に頼る
就活が辛くなってきた時、前述のような症状が出始めて「もしかしたら就活うつかもしれない」と思った時は、誰かに相談をしましょう。
ただし相談の相手は慎重に選びましょう。ただ話を聞く「傾聴」のスキルをもつ相手が近くにいれば、とても幸運です。
相談相手としておすすめしたいのはプロのカウンセラーです。学校のカウンセリングや病院の心療内科を上手に利用しましょう。
また、新卒の就職をサポートするエージェントの民間業者もあります。学生側に金銭の負担はありません。頼れるプロのエージェントが就職の相談に乗ってくれます。
企業側にとっては利用金額が高いため、資金に余裕があって人材の能力に強い関心のある企業ばかり集まっており、「良い職場」とのマッチング機会が増えます。
4.おわりに
日本が国際的に貧しくなっていくに従い、就職活動の厳しさはどんどん増しています。
現時点で社会人としてのスキルを持たない学生にとっての就職活動は、望む望まないに関わらず困難で辛いものです。
就職はお金を稼ぎ、食べていくために避けられないものです。しかし、その重圧のあまり心身を病んでしまっては元も子もありません。
もし就活のことを考えたときに体調すら乱れるほど辛くなっていたら、一人で抱え込まず、人に頼ってその時期を「やり過ごす」ことも大切です。プロの助けを借りて、自分を大切にする機会を作ってみてください。